第26回研究成果発表会
「第26回研究成果発表会」を、2019年9月27日(金)に東京・大崎の大崎ブライトコアホールで開催し、2017年度に助成し、2018年度に実施された「調査研究」「助成研究」「普及啓発事業」の成果を20名の研究者等に発表していただきました。
開会のご挨拶
開会にあたって、当財団理事長・中山晴喜が登壇しました。当財団は、1992年の設立以来、「人間と遊び」という視点から科学技術に関する調査・研究・開発の推進及び助成をし、研究助成だけでも700件、総額15億円に上ることを伝えました。研究対象の多様化や研究を支えるハードウェアの高度化、新技術を取り込んだ遊びの成長についても触れました。近年注力している啓発活動を紹介し、「公益活動を通じて社会に明るい火を灯す存在であり続けたい」と念願を示しました。
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口頭発表
口頭発表では、市民や自治体職員が作成する「まちづくりゲーム」の活動が広がっていて、参加者が自治体の政策に理解を深めていることがわかりました。また拡張現実ゲームにおける社会的交流が高齢者の生活の質や身体活動レベルにどう影響するかといった現代の社会問題に対する研究も見られました。
ポスター発表
ポスター発表会場では、奈良時代の遊びの実態を明らかにし、歴史的な位置づけを試みることを目的とした遊戯具研究や、初心者でもわかりやすいよう将棋の勝負の状況を可視化するインターフェース開発等、遊びに関するユニークな研究が発表されました。
「夢のゲーム」研究アイディア大募集 受賞者紹介
審査の結果、最優秀賞1点、優秀賞11点、ジュニア賞9点が選定され、若い受賞者が多い結果となりました。最優秀賞は高校生の中西勇輝さんによる、選挙をゲームで体験する「民意をつかめ!」でした。中西さんは「自分たち若い世代を動かしたい」と述べました。「楽しくプログラミング学習」で高等専門学校生の北山未羽さんが選ばれ、「リズムゲームでプログラミングに馴染もう」で優秀賞に選ばれた大学生の太田明理紗さんは「教員への苦労を減らしたい」と思いを伝えました。
特別講演 倉林 修一先生(Cygames Research研究所長)
「ゲーム研究における産学連携の実践 アカデミアの叡知と産業界の実践の相互作用による「面白さ」の探究」
特別講演はCygames Research研究所長 倉林 修一先生に貴重なお話をいただきました。抜粋と動画を掲載しますのでご覧ください。
研究者から事業会社への転身の経験から、「アカデミアの叡智と産業界の実践の相互作用」について紹介します。
私は博士号取得後、准教授となりました。その後ゲーム産業におけるゲーム開発を、科学の力でエンパワーしていくことを標語に掲げ、株式会社「Cygames」の研究所長として「Cygames Research」を2016年に設立しました。
まず産業界の改革について紹介します。企業が研究所をもち、基礎研究を行っています。パスツール型で、金融ならフィンテック、教育ならエデュテック、ゲーム産業ならゲームテックというように企業が技術開発の主体となっています。産業界の研究の改革の例として、企業側は博士号を所有するリサーチャーを中心に現場経験を有するエンジニア達を混ぜたチーム構成にし、フラットな関係で実際に実験、テスト、検証を行わせる等があります。
次に、大学院のカリキュラム改革について説明します。大学や公的研究機関は基礎研究だけでなく実用化を目指すべきと私は考えています。私は大学教員時代に産業界にコミットできる博士人材を育成するプログラムを運営しました。具体的には、修士・博士が複数の教員から定常的に指導を受けられること、海外留学をすること、その後も継続的に連携を深められることの3つを行いました。またなるべく離れた分野の研究にもコミットすることも行うことで、知見の強化や視野の拡大につながりました。その研究人材を企業が継続的に獲得した結果、産業界の現場チームへの適応力が劇的に高まり、建設的な提案ができるようになりました。最後に、相互作用に求められるスキルについて話します。論文を書いて体系化する力と、実装を養う開発力と、特許を作って権利化する力の3つです。しかしこれらの産学提携は重要な手段ではありますが、目的ではありません。最終的な目的は最高のコンテンツを開発すること、そして全員がそれを共有することです。
講評
最後に、当財団理事で研究助成、調査研究の選考委員長を務める成蹊大学名誉教授の渡邉一衛先生が講評を行いました。今回は、超高齢化社会における高齢者も楽しめるようなゲームに関する研究や、考古学、物理学、教育学、医学等いろんな分野からの発表があり興味深かったが、今後も引き続き広い分野に、特に若手研究者に支援をしたいと述べました。倉林先生の講演にも、「このように刺激を与えられて、自分がどういうところに進んだらいいかを考えるきっかけになったんじゃないか」とコメントを寄せました。
交流会
研究成果発表会終了後に、立食形式の交流会を開催しました。
研究発表者、講演者を始めとする参加者が、発表内容などを中心に盛んに会話しながら楽しく交流していました。