公益財団法人中山隼雄科学技術文化財団 公益財団法人中山隼雄科学技術文化財団

特集

高 友康

東京大学大学院学際情報学府
文化・人間情報学コース筧研究室
修了 高 友康

音楽の力で日常を面白くする

 東京藝術大学の学部生時代はVRを使って音楽を視覚情報化する研究を行っており、そのとき作った作品で東京大学の制作展に参加しました。
 そこで出展したのは、VRゴーグルをつけてピアノに触れると音と連動して映像が飛び出して見える作品。初めてピアノに触れた時の「あ、音が出た!楽器って面白いな」という感覚を再現しようと試みました。
 実際に展示してみると、今まで楽器が弾けないことをコンプレックスに感じていた人たちが展示に好感を示してくれたので、とても嬉しかったです。
 楽器に対する苦手意識を少しでも減らすことができたのではないかと思います。
 この経験から、大学を卒業したあとも音楽や視覚化に関わりたいという気持ちが強くなったため、東京大学大学院の情報学環に進学しました。
 進学後に参加した、2020年開催の「あそびの未来ファクトリー」では、「はらぺこおばけAR」というゲームを制作。この作品では、プレーヤー同士がお化けとなり、お互いの空間に出現し、自分の部屋に散らばる「人魂」を誰が一番食べられるかを競って遊べます。ARを使うことで、遠隔地にいるプレーヤーとも一緒に遊べるのが特徴ですね。
 「あそびの未来ファクトリー」での作品づくりでは、業界の第一線で活躍する先輩クリエーターに評価してもらえるので、モチベーションがとても上がりました。また先輩のアドバイスから、1人でゲーム制作をしている時に は得られなかった改善点を発見でき、非常に勉強になりました。
 同じく2020年に参加した、中山財団主催の「未来の音楽を考えるアイデアソン」では、「ゲームにおけるインタラクティブミュージック」というテーマで制作を行いました。
 インタラクティブミュージックとは、主にビデオゲームなどで場面に応じて変化する演出のための背景音楽です。これを日常生活に応用したらどうなるだろうかという好奇心から、このテーマを扱うことにしました。
 日常への応用は、例えば、自分が今見ている風景に合わせて音楽が選ばれたり、会話している相手の感情に合わせて自分の耳元で流れる音楽も変化したり、というようなイメージです。現実世界でも音楽などを使ったゲーム体験が発生すると、生活 を面白くできるのではないでしょうか。
 修士論文では、オーディオゲームをテーマに執筆しました。論文のために制作したゲーム『大爆走! オーディオレーシング』は、音だけで周囲の情景を想像したり、ゲームの状況を把握したりするゲーム。イヤホンから 流れる音の方向にハンドルを切りながらコース上を走行し、タイムを競います。オーディオゲームは視覚情報を想像で補う分、プレー可能な状態まで落とし込むのが難しかったです。
 卒業後はゲーム会社に就職し、効果音やインタラクティブミュージックのような変化する音について考える仕事に取り組みます。これからも音やあそびを通して面白い体験を作っていきたいです。

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