ご挨拶
中山隼雄名誉会長が、私財200億円余りを投じて当財団を創立してから、優に四半世紀を超えました。この間に助成した研究件数は743件、助成金の総額は15億円弱に上っており、独立財団として厳しい環境を乗り越え「人間と遊び」というユニークな研究テーマを掲げた事業活動は、とみにその重要性を増しつつあります。
この間に「人間と遊び」をコアとした分野では大きな環境変化がありました。取り分けコンピュータゲームの分野では、まさに時代が追いついてきたといっても過言ではない状況が現実になりつつあります。取り扱う分野が広がれば、プラスの側面だけでなく、WHOがゲーム障害を依存症に分類するなど、マイナスの側面も顕在化しますが、それに伴い研究等に参加する異分野における研究者間の共同研究の可能性も開けてきます。当財団も数年前からそのような方向の研究を後押ししてまいりましたが、研究者自体もより広く深い研究課題に取り組む姿勢に変化しつつあります。
「人間と遊び」を巡る科学技術の進歩には目覚ましいものがあり、ゲームや動画といったデジタルな娯楽をめぐって、技術の垣根を軽々と超える競争が始まっており、夢を追い越すような成果が次々に現実となっています。
当財団としては、研究者だけでなく、一般の人々、特に児童・生徒たちも楽しく遊びながらコンピュータに馴染んでいけるよう、様々な団体と手を結び、研究成果を一般に普及啓発する活動を展開しております。その一例として、東京大学総合図書館内の「中山隼雄未来ファクトリー」を一つの拠点として有効に活用してまいります。
又、研究の間口と奥行きを広げるため、6年前から小学生を含む一般の人々に呼びかけ「夢のゲーム研究アイディア」を募集してまいりましたが、安定的に多数の応募をいただき、当財団が主導する調査研究のテーマ設定の一助として大いに参考にさせていただいております。
「人間と遊び」は、私達人間の精神活動の分野において、有史以前から強い結びつきを有しており、未来においても無限の可能性をもたらしてくれるでしょう。
私共は、「人間と遊び」の公益活動により、社会に明るい火を灯す存在でありたいと念願しています。
2019年9月
理事長・代表理事