公益財団法人中山隼雄科学技術文化財団

調査研究事業

研究成果発表会

 調査研究並びに助成研究を実施された研究者(国際交流助成者を除く。)は、全員毎年9月下旬に東京で開催する「研究成果発表会」に出席し、ご自身の研究成果を発表していただきます。又、第一線で活躍されている講師による講演も実施しております。研究者だけでなく、一般の方々にもご参加いただくことにしておりますので、発表会終了後は、立食パーティー方式の交流会を行い、研究者相互はもとより多くの方々に交流していただいております。

第25回研究成果発表会(2018年9月28日開催)の様子

 当財団の調査研究及び助成研究等の研究成果を発表する「第25回研究成果発表会」を、2018年9月28日(金)に東京・大崎の大崎ブライトコアホールで開催し、2016年度に助成し、2017年度に実施された「調査研究」「助成研究」「普及啓発事業」の成果を24名の研究者等に発表していただきました。

 当日の模様を要約します。

開会のご挨拶

 開会にあたって、当財団理事長・中山晴喜のメッセージを平林秀明常務理事が代読しました。当財団は1992年の設立以来、「人間と遊び」という視点から科学技術に関する調査・研究・開発の助成等を推進しており、これまで706件、総額14億円あまりの研究助成を行っていること、研究内容は幼児から高齢者、脳科学から電子工学、囲碁からコンピュータゲームまで多岐にわたり、貴重な成果を上げていることを伝えました。また、近年注力している啓発活動にも触れ、当財団の寄付によって設立された「東京大学情報学環オープンスタジオ」を紹介。「今後も公益活動を通じて社会に明るい灯をともす存在でありたい」と述べました。


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口頭発表

 口頭発表では、学術機関などの研究者らによる助成研究の成果報告とともに、当財団が「様々な社会的課題をゲームの手法を使って解決しよう」というコンセプトのもとに、広く一般から募集している「夢のゲーム」に寄せられたアイディアを元にした研究発表も行われ、当財団の取り組みが着実に実を結びつつあることが示されました。


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ポスター発表

 ポスター発表会場では、VR(バーチャルリアリティ)ゲームや多人数同時プレーゲームなどコンピュータゲームに関する研究だけでなく、ゲームと法律、ゲーム開発者のキャリアといった科学技術以外の視点からアプローチした研究や、積み木パズルを用いたアナログ的な遊びに関する研究なども見られ、当財団が助成を行っている研究の多様性があらためてうかがえました。


「夢のゲーム」アイディア大募集 受賞者紹介

 5回目となった「夢のゲーム」研究アイディア大募集には、全国から斬新なアイディアが寄せられ、応募総数は463件にのぼりました。審査の結果、最優秀賞1点、優秀賞11点、ジュニア賞11点が選定され、有澤誠企画委員長に促されて2人の受賞者が登壇しました。「フェイクニュースを作ろう」で最優秀賞に輝いた大学院生の若松竜亀さんは、「真偽が定かでない情報の拡散を防ぐために受け手が意識すべきことをゲームを通して楽しく見つけてほしい」と作品のねらいを紹介。「未来の科学者育成計画!」で優秀賞に選ばれた高校生の櫻井宏樹さんは、「意識したのは、高価なハードウェアがなくても誰もが気軽にプレーできること。それがゲームの本質だと思うので」と作品に込めた思いを語りました。
(有澤企画委員長と若松さん櫻井さん)



特別講演 鳴海 拓志先生(東京大学情報理工学系研究科講師)
「遊びが変えていく自己 バーチャルリアリティと身体性の観点から」

VRは、物理的にはそこに存在しないにもかかわらず、感覚的には存在しているように感じさせるための技術です。現在普及しているVRは、視覚と聴覚に訴求し、仮想世界への没入感を感じさせるものがほとんどですが、東京大学情報理工学系研究科の鳴海拓志先生は、五感を使ったVRの研究に取り組んでいます。
研究の一つが、「メタクッキー」です。被験者にヘッドマウントディスプレイを装着してもらい、VRでチョコレートクッキーを見せ、チョコレートの匂いを流してクッキーを食べてもらうと、実際はプレーンクッキーを食べているにもかかわらず、チョコレートクッキーの味に感じるそうです。これは、「見た目と匂いがチョコレートのものは、チョコレートの味がする」という過去の経験と、視覚と嗅覚から得た情報が補完しあい、本来そこにない味を感じさせるためです。人間の五感は独立していると考えられていましたが、実は「クロスモーダル現象」といって相互に影響し合っています。こうした現象をうまく使うと、VRで多様なインターフェースを簡単に作れるそうです。
また、VRで食べ物のサイズを変えると被験者の摂取量がどう変化するかという研究も紹介。食べ物を小さくすると摂取量が1割程度増え、大きくすると1割程度減り、VRを使えば労せずダイエットできる可能性を示唆しました。ほかにも、遠隔会議を行う際、VRで相手の表情を笑顔に変えると、出てくるアイディアの数が1.5倍になり、VRが私たちの創造性を引き出すことがわかったそうです。
鳴海先生は、VRでの体験が人間の知覚や感情、さらに行動まで変える大きな原動力となることを示しました。その一方で、使われ方によっては、例えば、好きではないものを好きになる、欲しくないものを買ってしまうといったデメリットをもたらす可能性があることも指摘。「VRをどのように使えば人間にとってよいのか、よくないのかを社会で議論していく必要がある」と提言し、講演を締めくくりました。

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講評

 最後に、当財団理事で選考委員長を務める成蹊大学名誉教授の渡邉一衛先生が講評を行いました。今回は、科学、技術だけでなく、法律や教育などをテーマにした文化的側面からの研究も発表され、当財団の趣旨に合致した研究が推進されていることを高く評価しました。そして、これからも助成を続けていくことを伝えるとともに、「今日ここで幅広い研究領域に触れたことを、ぜひ自身の研究のヒントにして、また新たな研究の方向性を作っていってほしい」と呼びかけました。



交流会

 研究成果発表会終了後に、立食形式の交流会を開催しました。
 研究発表者、講演者を始めとする参加者が、発表内容などを中心に盛んに会話しながら楽しく交流していました。


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